Dajey短編小説 "Basic"アートウォレット part1 | Dajey Leather Products

2019/07/27 08:58


"Basic"アートウォレット ストーリー


「わすれもの 



ロンドンの郊外の外れに、ある""名店レストランがある。


そう、""の通り、かつてはロンドンを代表する三ツ星レストランの一つで"あった"


そして、そこに勤めるオーナーシェフ<ジェームズ>は、フランス料理の新鋭としてロンドン有数の料理人の一人で"あった"


そう、かつては。


現在も勿論、変わらずロンドン郊外でオープンしている「星の数程あるレストランの一つ」として開店""している。


そこの厨房の中は、

過去の栄光から衰退した現在の状態を見事に表しているかのように荒れに荒れていた。


怒声が飛び、皿が割れる音、汚れ散らかった皿洗い場、耐えきれずに厨房から逃げ出す見習い料理人。

これが、現在のこのレストランの日常風景である。


オーナーシェフのジェームズは、かつてはイギリスを代表する有数の天才シェフとして名を馳せていた。


しかし月日が流れ、名声が高鳴るにつれて、ゆっくりと名声の海に溺れていくかのように、探究心や努力を失い、アイデアは枯れ果てた。

失ったものと引き換えに、傲慢さが生まれ、まるで輝いていた昔の姿はそこには無かった。


そんな現実を直視してか、はたまた逃避してかは知る由も無いが、

あろうことか、厨房で朝から酒浸りで、見習いに怒鳴り散らしながら、

酒臭い口で「俺の料理は世界一なんだ!」とわめき散らしている始末である。


ジェームズの凋落は、

当然のように料理の味に合わせ鏡のように表れ、レストランの三ツ星の勲章は流れ星のように遠く彼方へ消え去り、

客足は遠のくばかりであった。


そんな日々が、

ただ無表情で回転する時計の針と共に、虚しく過ぎ去るだけだった。


そんないつもの週の真ん中の、

とあるいつもの水曜日、

また、

いつものように仕事を終え、Tube(地下鉄)の終電に乗り込み、家路へとついた。

当然いつものように朝から酒浸りのこの男は、足元もおぼつかないままの家路であった。


そして、

いつものように迎えた

次の日の朝、目が覚めた瞬間に、どこかいつもとは違う違和感、ある胸騒ぎに襲われた。

少し不安を抱きながら、恐る恐るズボンのポケットを弄った。


「やっぱり、、無い」

「やっちまった、なんてこった」


ジェームズは頭を抱えこむや否や、天を仰ぎながらベッドに倒れこみ、深呼吸しながら心を落ち着かせようと試みながら、昨晩の帰り道を一つ一つ思い出していった。


「やっぱりあの時だ。」

 

あろうことか、

深く酔っ払っていたジェームズは電車の中で、パスを手にし、財布を椅子に置きながら、強い睡魔に襲われていたのだった。


そんな状況を

微かな記憶から手繰り寄せ、

電車の中で落としたことは間違い無さそうだと確信したジェームズは、

半ば諦めながらも、

早速、Tubeの駅に向かい、昨晩の終電電車で忘れものは無かったか駅員に確認をした。


すると、幸いにもどうやらこの駅の下にTube全ての路線での忘れ物が集まっている収容所があるとのことだった。


part2へ続く。